Hybrid Logic
Hybrid logicは、様相論理を拡張した論理です。Hybrid logicでは、通常の命題変数に加えて、「可能世界のうちただ一点で成り立つ」という特殊な命題変数を導入します(これをnominalと呼びます)。この特殊な命題変数とそれに伴う種々の論理記号を導入することによって、次のような利点が得られます。
Kripkeモデルの性質をより豊かに表現できます。 非反射性(すべての可能世界は、自分自身に到達関係がつかない)は、様相論理の論理式では定義できず(メモ: 非反射性は正規様相論理で定義出来ない)、hybrid logicに拡張してはじめて定義できる性質の例です。 また、豊かな定義可能性をを生かし、hybrid logicを用いてグラフ理論を分析する研究もあります(Benevides & Schechter, 2009)。 「可能世界のうちただ一点で成り立つ命題」は、現実世界におけるさまざまな概念に対応します。 たとえば、時間概念における「瞬間」、あるいは人間関係における「個人」を、nominalで表すことができます。 実際に、hybrid logicを用いて「友人関係」のモデルを与える研究もあります(Seligman et al., 2011)。
適当な制限を加えれば、hybrid logicにおいても決定可能性が成り立ちます。 決定可能性とは、「与えられた論理式がその論理の定理かどうかが、有限時間で判定できる」という性質です。 様相論理はこの性質が成り立っていますから、その意味では様相論理の「よい拡張」とも言えます。